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EVENTS

2025.03.10

NIKKEI Digital Forum in ASIA 2025 ホーチミンへ登壇しました

2025年2月18日にベトナム・ホーチミンにて開催された、日本経済新聞社と日経BP主催、人工知能(AI)などデジタル技術の活用を産官学で議論する「NIKKEI Digital Forum in ASIA Sustainable Society & Solution Summit」に、フォーデジットCEOの田口、COOの末成、フォーデジットベトナム会長の西村が登壇しました。

ユーザー中心のサービスデザインの重要性

まずはじめに、CEOの田口がユーザー中心のサービスデザインの重要性をテーマにプレゼンテーションを行いました。

変化する市場とデザインの新しい役割

田口:
グーグルのレポートによると、東南アジアにおけるデジタル経済は今後5年で2〜3倍の成長を迎えると予測されています。特にベトナムについては、若い人が多く、インフラの整備も着実に進んでいて、様々な形でデジタル経済の成長の土台が整っていくと予測されています。

 

経済が発展するとユーザーが変わってきます。サービスがいろいろ出てきて、ユーザーが選択できるサービスが増えていきます。そうするとユーザーは自分にとってより良い体験を提供してくれるサービスを選択するようになります。つまり、デザインの役割は、ユーザーにとっての価値、ユーザー体験のデザインということが重要になってくるんです。

 

これを表す象徴的な言葉として、アメリカの西海岸のベンチャーキャピタルのリーダーであるポール・グラハムが『人が欲しがるものを作れ(Make Something People Want)』という言葉を残しています。ただ、本当にユーザーにとって価値があるものを作るというのは、簡単ではありません。デザインは一見、表面的なものづくりのように見えますが、実際にユーザーにとって価値ある体験を届けること、つまりユーザー体験のデザインというのは、とても時間のかかる取り組みなんです。

長期的視点で育むデザイン価値

田口:
ユーザーにとって必要なものを作るという活動は、時間をかけて理解を深めていく必要があります。一つ象徴的な例を挙げると、アップルのHuman Interface Guidelineがあります。これは現在、AppStoreにアプリを提供する際の標準的なガイドラインとして知られていますが、実は1977年には既に作られていて、そこから48年もの間、少しずつアップデートを重ねてきているんです。

 

このガイドラインには、プラットフォームの基本要素から具体的な設計パターン、ユーザー体験の原則まで、優れた体験を生み出すためのデザイン原則が定義されています。これは単なるルールブックではなく、『私たちが提供するデザインの価値とは何か』という問いへの答えを、長年にわたって追求し続けてきた証でもあるんです。

 

このように、デザインはパッと出来上がるものではなく、時間をかけて育てていくものです。さらに、こういった取り組みは、自分たちのサービスや事業が顧客にとってどうあるべきかを示す企業文化や姿勢にもつながっていくのだと考えています。

デザイン価値の継続的な創造プロセス

田口:
HCDプロセスというものが国際規格で定められていまして、このプロセスは『プロジェクトを作る→ユーザーの生活を理解する→ユーザーの要求を定義する→ソリューションを提供する→効果をチェックする』というサイクルになっています。HCDの目的は、ユーザーにとってよりよい体験を作り出すことです。ユーザーの生活や行動を知って、サービスがどう使われているのか、どう使われるべきなのかを編み出していくんです。

 

ただ、ソリューションが一発でうまくいくということはなかなかないですね。ユーザーの環境は変わりますし、iPhoneのアップデートみたいに時代環境も変化していきます。だからチェックして、必要に応じて各ステップに戻って改善を繰り返していく。このサイクルは平面的に見えますが、実際は経験や知見を積み上げていくプロセスなんです。

 

なのでデザインって見た目や施策を考えて終わり、というものではありません。まずユーザーのことを知って、どういう体験をすべきかを考えて、それを積み上げていく。デザインはワンショットで消費されるものではなく、企業のデザイン力として蓄積していく資産なんです。

「ユーザー中心デザインの重要性」について、企業にとってデザインの力を資産として蓄積していく長期的なサポートをすること、デザイン教育などにも取り組んでいることを伝えてプレゼンテーションを終えました。

ベトナムにおけるITとサービスデザイン

続いて、フォーデジットCOOの末成とフォーデジットベトナム会長の西村が登壇し、NTTデータベトナムの吉井様、AEONベトナムのITマネージャーTran Thanh Binh様、モデレーターの佐藤央明様(日経BPトレンドメディアユニット長)を迎え、ベトナムにおけるITとサービスデザインの関係性についてパネルディスカッションを行いました。(以下敬称略)

日本とベトナムの違い

吉井:
日本ではグローバルなデファクトのプロダクトを使いやすい状況です。なぜならAWS、Azureなどのクラウドのリージョンがあるからです。一方、ベトナムではパブリッククラウドのリージョンがなく、個人情報保護の法規制で国内データを国外に持ち出せないという制約があります。
また、欧米ではコンサルサービスへの投資が当たり前ですが、ベトナムを含め東南アジアではそういうマインドが少なく、「コンサルティングは営業活動の一部でしょう」という方々も一定数います。
開発スタイルも異なっていて、日本は人員を集中的に投入してしっかりと作り上げるのが得意ですが、ベトナムではアジャイル的な手法を取り入れながら、軽いプロトタイプを動かして進めていくことが一般的です。

 

西村:
やはり、サービスデザインという概念自体を知らない人が多いのが課題としてありました。「デザインを頼んでいるのになんで調査とかするんですか?」って最初に聞かれたりするので、そこが一番難しかったです。ただ、デザインが表層的ではないということは一緒にプロジェクトをやると理解してもらえます。デザインをするときに調査をやって、デザインに落としこむというのをお客様と一緒にやることで、上司に説明しやすい、周りを巻き込みやすいという効果も出ています。

 

ベトナム市場の可能性と日本企業の役割

Binh:
ベトナムは人口規模だけでなく、市場としての魅力度で見ても、アメリカに次ぐ東南アジア最大の可能性を秘めています。ただし、日系企業がベトナムに進出する際の課題として、提案する商品やサービスが本当にベトナム人のニーズに合致しているのかを慎重に見極める必要があります。

 

吉井:
日本では、先進的なテクノロジーやHCD(Human Centered Design)、コンサルティングなど、ユーザー視点での課題解決が進んでいます。ベトナムはこれから発展していく段階にあり、私たちが日本で培ったデータ活用やDX(デジタルトランスフォーメーション)の知見を橋渡しできればと考えています。ただ、これから大規模なシステム開発や投資案件が増えていく中で、プロジェクトマネジメントにはまだ課題があります。その意味で、先進テクノロジーを活用したプロジェクトの円滑な遂行とノウハウの提供が、強みになると考えています。

 

西村:
ベトナム企業の特徴として、社内にデザイナーが常駐していることが多いんです。「デザインの支援をしましょうか」と提案すると、「社内にデザイナーがいるので大丈夫です」と言われることもあります。これは「デザイン」という言葉の定義の違いに起因していると思います。ビジュアルやプロモーションのデザインは確かにどの会社でも必要で、ベトナムの企業は特にスピーディーな実行が得意です。そのため、近くにデザイナーを置いて、すぐに実行できる体制を取っている会社が多いように感じます。ただ、社内デザイナーは自社の範囲内でしか物事を見られない場合もあります。私たちとしては、市場調査に基づいたデザインの重要性を経営者の方々に理解していただきながら、ベトナムと日本、それぞれの良さを活かしたデザインサポートを提供していきたいと考えています。

 

末成:
日本企業でもインハウスデザイナーは今でも多く、彼らと協業しながら成長を目指すケースも増えています。ただ、新しいアイデアや次のステップについては、社内だけでは生み出しにくい面があります。私たち外部のデザイン会社は、様々な業界での経験を持っているので、新たな刺激やデザインのナレッジを提供する役割を担えると考えています。

 

顧客満足を生み出すサービスデザイン

Binh:
私たちの企業のコアバリューは、「もの」ではなく「満足」をお客様に届けることです。BtoCビジネスとして数多くのエンドユーザーとの接点があるからこそ、そこで得られるフィードバックを活かして満足度向上につなげていくことが重要です。そのためには、ビジネス戦略と「体験を通して得られる感動」の両方を高めていく必要があります。小売業として、様々な場面でユーザーの満足度を高める工夫が求められます。特に重要なのは「真実の瞬間(モーメント・オブ・トゥルース)」、つまりサービスを使う前、使用中、使用後の体験をトータルでデザインすることです。

 

吉井:
イオン様とは日本やマレーシアなど、様々な国でサポートをさせていただいています。日本での成功事例をベトナムでも展開できることは大きな強みです。最近では、イオンモールさんに加えてイオンベトナムさんでも、スーパーマーケットだけでなく、テナントやフードコートを含めた総合的な顧客体験の提供を始められています。私たちは、商品を売るだけでなく、様々なサービスの連携や顧客行動全体をサービスデザインとして捉え、それを支えるITインフラやアプリケーションの整備を行っています。重要なのは、サービスデザインとそれを実現する仕組みを総合的に考えることです。これはIT部門だけの課題ではなく、様々な組織が連携して顧客体験の向上に取り組む必要があります。

 

西村:
私たちフォーデジットはデザインを担当する立場として、IT部門に限らず様々な組織の方々と対話しながら新しいサービスを検討しています。そのため、組織間の壁を取り払う「緩衝材」のような役割も果たしています。例えば、今年ベトナムで開通した地下鉄のように、新しいインフラサービスは使い始めのハードルが高くなりがちです。そういった部分を私たちのサービスデザインの手法を活用して改善し続けることで、皆さんの生活がより便利になればと考えています。

 

末成:
グローバルスタンダードは確かに重要で、良いものは積極的に取り入れるべきです。しかし同時に、ベトナムならではの新しいサービスや価値を見出すことも大切です。そのためには、様々な国や文化を超えたコラボレーションが必要です。Binhさんがおっしゃるように、日々の顧客接点から得られる気づきと、私たちの知見を融合させることで、より良いものが生まれると考えています。私自身、数十年の経験で培った設計のノウハウを提供できますが、それだけでは十分ではありません。現地の視点と私たちの経験、両方を組み合わせることで、真の価値が生まれるのだと思います。

 


 

今回のイベントでは、Grab社、双日株式会社の取り組み、FPTグループ会長の対談など、アジアのデジタル革新を牽引する企業や有識者による充実したセッションが展開されました。フォーデジットのセッションにも多くの方々に関心をお寄せいただき、ベトナム市場におけるデザインの可能性について、貴重な対話の機会となりました。

 

また、フォーデジットがプロデュースを担当したネットワーキングパーティでは、早稲田大学大学院の入山章栄教授のご挨拶から始まり、産官学の垣根を越えた活発な交流が行われました。

 

フォーデジットは、今後もアジアの成長市場における実践を通じて知見を深めながら、企業や社会の持続的な発展に貢献してまいります。

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