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2020.04.20

「ゆうちょ通帳アプリ」開発に見るオープンイノベーションのかたち

ゆうちょ通帳アプリ」の開発は、ゆうちょ銀行とNTTデータ、フォーデジットの3社コラボレーションによるプロジェクトです。今回、実際にこのプロジェクトに関わった各社4名のスタッフにインタビュー。開発の背景からアプリの概要、デザインのポイントや使いやすさといったアプリの魅力、そして今回のプロジェクトでそれぞれが学んだことまで、幅広く話を聞きました。

有馬 美瑛子 - Mieko ARIMA

株式会社ゆうちょ銀行
営業部門デジタルサービス事業部

山口 穂乃佳 - Honoka YAMAGUCHI

株式会社ゆうちょ銀行
システム部門システム開発第一部

西川 瑞紀 - Mizuki NISHIKAWA

株式会社NTTデータ
第一金融事業本部 郵政ビジネス事業部
第二開発統括部 第三システム担当

奥田 怜子 - Reiko OKUDA

株式会社フォーデジット
アートディレクター

3社の強みを生かして、これまでにないアプリ開発がスタート

ー まずは今回のアプリを開発することになった経緯を教えてください。

 

有馬:もともと「ゆうちょダイレクト」※ の「残高照会アプリ」というものがありましたが、これは「ゆうちょダイレクト」の利用者様専用のアプリでした。今回は、より多くのゆうちょ銀行利用者様に使っていただくため、「ゆうちょダイレクト」のお申し込みをしなくてもお使いいただける通帳アプリを開発することになったのです。窓口やATMのみご利用の方がデジタルサービスへシフトする最初の入り口として、どなたにとっても使いやすいアプリというものを目指しました。

 

※ゆうちょ銀行が提供するサービス。窓口やATM以外からもパソコン、スマートフォン、携帯電話、電話・FAXで口座にアクセスし、照会や送金ができる。

ゆうちょ銀行 有馬さん

ー 今回のプロジェクトにおいて、みなさんそれぞれどのような役割を担っていましたか。

 

有馬:ゆうちょ銀行の営業部門として企画・開発、それからプロモーション、大きく分けてその2つに携わりました。

 

山口:私はゆうちょ銀行のシステム担当なので、3社で検討して決定したデザインや機能をアプリに実装するにあたっての調整を行いました。

 

西川:NTTデータの役割はアプリの実装、つまり実際にアプリを作っていく仕事です。私はその中でもプロジェクト管理担当で、クライアントやベンダーの窓口としてご依頼事項の調整や管理をしていました。

奥田:フォーデジットは、アプリ設計やUIをはじめ、ユーザー体験からビジュアルに関わるすべてを担当しました。私はアートディレクターとしてブランドコンセプトやUIデザインなどを担当したのですが、想定するターゲットユーザーのリサーチから関わっています。

ゆうちょ通帳アプリのデザインプロセス

ー 想定するターゲットとは?

 

有馬:インターネットバンキングを使っていない人、ITに苦手意識のある人でも使いやすいアプリを開発したかったので、それに当てはまる人をペルソナに設定しました。

 

奥田:ブランドコンセプトやターゲットに受け入れられるデザインを決めるために「嗜好性」「ライフスタイル」「金銭管理」などから、「なぜインターネットバンキングを利用していないのか」まで掘り下げて調査・検証をしました。それをもとにしたおぼろげなアイデアの段階から3社で共有し、すり合わせながら積み上げてコンセプトを固めていきました。

 

有馬:そうですね。それまでに週1〜2回ぐらいの打ち合わせが2カ月くらい続いたでしょうか。もちろん、そのあとも密に打ち合わせは繰り返しましたが。

シンプルなデザインで、誰にとっても使いやすいアプリに

ー アプリの特徴、魅力について教えてください。

 

有馬:これまでのゆうちょ銀行にはない柔らかい色合いのすっきりしたデザインが特徴で、インターネットバンキングを利用したことのない人やITに苦手意識のある人でも気持ちよく使っていただけるのではないでしょうか。インターネットバンキングでは申し込み手続きにハードルの高さを感じる方もいらっしゃいますが、このアプリは利用登録もとても簡単です。

 

山口:機能がシンプルなのでデジタル機器の操作に不慣れな人にも使いやすいのではないでしょうか。普段は通帳をメインに当行をご利用いただいている方にもぜひ使っていただきたいと思います。幅広い方に使っていただけたら嬉しいです。

ゆうちょ銀行 山口さん

有馬:今回のアプリ開発のためのリサーチで、実は20〜30代の若い女性の中にも紙の通帳に愛着を持っている方がたくさんいることが分かったのです。これは意外でした。そういうお客様には通帳とアプリを上手に使い分けていただきたいと思います。

 

西川:動画やアニメーションが盛り込まれ、見ているだけで心がワクワクするような作りになっているので、お金の管理が苦手な人にも楽しく使ってもらえるのではないでしょうか。

 

奥田:ゆうちょ銀行の「信頼感」「誠実さ」、簡単に使える「カジュアルさ」、初めて金融デジタルサービスを利用する人にとって「ちょっと手の届くくらいの新しさ」をコンセプトにデザインしました。本来のブランドカラーよりも少し軽めのグリーンを基調にしたのもポイントです。

ゆうちょ通帳アプリのUI

ー 魅力的なアプリを作るために、“産みの苦しみ”もあったと思いますが。

 

西川:デザインを強化したため、そのデザインを再現するためのシステム側の調整にとても難しいところがありましたね。ボタンのデザインを何度もテストしたり、細部にかなりこだわりました。設計面でも、アプリ内で迷子にならないようシンプルでわかりやすい遷移にするようオーダーがあり、それを実現することに苦労しました。苦労した分だけ使いやすいものに仕上がったと思います。

 

奥田:ライティングの面でも試行錯誤しました。例えば30文字の説明文を画面に入れると3行になってしまうけれど、わかりやすくするために必死で10文字を削るとか(笑)。そのほかユーザーを想定して柔らかな言い回しにするために何度も練り直すなど、削りすぎると伝わらなくなるので、注意しながら検討作業を繰り返しました。

 

山口:3社のコラボということでメンバーが多かった上、打ち合わせでは活発に意見が取り交わされました。多くの意見を一つに集約させるには時間がかかるので、全体的なスケジュールが遅れないよう調整するのには注力しました。

 

西川:今回、早い段階からプロトタイプのアプリを作り、実際に打ち合わせでチームのメンバーに見てもらって修正する、というやり方にも挑戦しています。これは個人的に初めての経験だったという意味で大変でした。

NTTデータ 西川さん

チームで作り上げることに、多くの学びと達成感がある

ー 今回のプロジェクトからみなさんご自身が得たもの、学びになったことがあれば教えてください。

 

有馬:例えばアプリのキーカラーになっている柔らかめのグリーンですが、デザイナーさんからのご提案がなければ、規定のカラーに縛られていたと思うんですね。このように、こちらが依頼したことにプラスアルファのご提案をしてくださるプロ意識、その姿勢に学ぶところは多かったですね。

 

山口:開発当初からシステム部門もメンバーに加わり、ユーザー目線を第一に考えてチーム全員で試行錯誤しながら作り上げてきました。特にデザインについては、私にはない観点で指摘をいただくこともあり、今後のアプリ開発を進めていく上で貴重な経験になりました。

 

西川:フォーデジットの方々が「ユーザーだったらどう感じるか」ということを突き詰めて発言されるところを見て、その視点の重要性に気づかされました。私自身、今まで開発者目線になってしまいがちだったので。また、3社のチームで作り上げていくというところに、とても大きな達成感がありました。

 

奥田:せっかく一緒に作らせていただく上で、いわゆる「御用聞き」というような状態にはなりたくなかったので、どんどんご提案させていただきました。それに対して、みなさんからたくさんご意見をいただくことができ、その都度、学びがありました。そうしたフラットな関係で一緒にアプリ作りができたのがとても楽しく、嬉しかったです。フラットな関係性が共創する上では重要だと思いました。

フォーデジット 奥田さん

有馬:フラットな関係性でいられたのは、チームのみなさんの熱意を感じられたからではないでしょうか。納得するまで提案する、信念を通すという熱意。そういった空気がプロジェクトチーム全体に広がったことで、それぞれの立場や会社の間の壁が取り除かれ、より良いものを作ることにつながったように思います。

 

奥田:熱意を持って取り組めばプロダクトを愛せるし、愛した方が絶対にいいものを作れると思うんです。その上で、自分の担当領域だけをやるのではなくチームで作り上げたことでいいものができたと思います。

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